こんな僕でも社長になれた - 第五章 ペパボ黎明期
起業を決意 十月下旬。
その日僕は、薬院の住宅街の中にひっそりと佇む小洒落た料理屋に、アキコさんを連れだした。
彼女の長く苦しいつわりはようやく落ち着いて、おなかも少しずつ目立ち始めていた頃だった。その店の名物は鶏料理で、入り口の暖簾には大きく「鳥すき」の文字。
「今日、これ食べよう」
僕が言うと、彼女は、
「おぉ、豪勢だねえ」
と言って目を輝かせた。
アルコールの飲めない僕と彼女は、コーラとオレンジジュースで乾杯をして、それからしばらく、他愛のない話を交わした。