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2020振り返りと2021これから(と、おすすめの5冊)

あけましておめでとうございます。

毎年、CAMPFIREとして1年のテーマを掲げることにしていまして、昨年2020年のテーマは「選択と集中」でした。2020年以前に立ち上げた様々な新規事業や、買収により増えた事業を整理し、経営資源を集中させ筋肉質な組織にすることが目的でした。そして、その目標はほぼほぼ達せられたと思います。

両利きの経営にもあるように、「探索と深化」といった両利きでの経営を心がけていますが、私たちのようにまだまだ組織も資金も小さなベンチャーでは両方を同時に行うことはなかなかに難しく、探索フェーズと深化フェーズに分けて、時流を見極めながら経営判断していくことが必要になります。そういった意味では、2020年は選択と集中を通じた「深化」の年であったのだと思います。

なるべく自身・自社の既存の認知の範囲を超えて、遠くに認知を広げていこうという行為が「探索」である。探索によって認知の範囲が広がり、やがて新しいアイディアにつながるのだ。しかし一方で、探索は成果の不確実性が高く、その割にコストがかかることも特徴だ。
 一方、探索などを通じて試したことの中から、成功しそうなものを見極めて、それを深掘りし、磨き込んでいく活動が「深化」である。深化活動があるからこそ、企業は安定して質の高い製品・サービスを出したり、社会的な信用を得て収益化を果たすことができる。
 このように、不確実性の高い探索を行いながらも、深化によって安定した収益を確保しつつ、そのバランスを取って二兎を追いながら両者を高いレベルで行うことが、「両利きの経営」である。両利きの経営が行えている企業ほどパフォーマンスが高くなる傾向は、多くの経営学の実証研究で示されている。

2020年はコロナに始まりコロナに終わった年でもありました。2月、どこよりも早く全社員リモート体制への移行を発表しましたが、大きなトラブルも無く移行出来たのは、これまで多様な働き方を推奨してきたからなのだと思います。組織として多様性を持つということは、予測できない未来に対しての弾力性、「反脆弱性」を備えるということでもあります。

衝撃を利益に変えるものがある。そういうものは、変動性、ランダム性、無秩序、ストレスにさらされると成長・繁栄する。そして冒険、リスク、不確実性を愛する。こういう現象はちまたにあふれているというのに、『脆い』のちょうど逆に当たる単語はない。本書ではそれを『反脆(はんもろ)い』または『反脆弱』(antifragile)と形容しよう。

また、コロナにより困難を強いられる方々に向けて開始した、手数料0%でクラウドファンディングを行えるコロナウイルスサポートプログラムでは、プログラムを通じて資金調達を始めた事業者の数は4600件、支援者数は延べ85万人、集まった支援総額は100億円を超えました。

結果的に、昨年同月比でGMV(流通額)600%増と大きく成長をすることが出来ましたが、これは「特需」などではなく、コロナにより急速に進んだDXにより、強制的に未来が前倒しされたのだと感じています。激変する環境の中で、不安を抱えながらも頑張ってくれたメンバーには感謝しかありません。

10月には、草なぎ剛さんを起用したテレビCMを大きく展開しました。こちらも、全国で高まるクラウドファンディングのニーズに対して、私たちCAMPFIREを知ってもらえる施策として、とても有効でした。

年末には40億円の資金調達も発表しました。BASEとの資本業務提携により、個の時代における経済活動のインフラとして、個人ならびにSMB ( Small and Medium Business )をエンパワーメントし、個人やスモールチームが活躍できる世界の実現を共に目指していきます。

さて、今年のテーマですが、「ミッション=プロダクト・ファースト」にしました。昨年の「選択と集中」に引き続き、テック企業として、改めてミッションとプロダクトに原点回帰をします。

新ミッションである「一人でも多く一円でも多く、想いとお金がめぐる世界をつくる」を意思決定における最重要事項とし、採用や評価、育成、制度設計、事業施策など、あらゆる局面においてこのミッションを最優先として経営陣含め全メンバーが意思決定と行動を行うというものです。

ミッションは、行動本位たるべきものである。さもなければ、単なる意図に終わる。ミッションとは、組織に働く者全員が、自らの貢献を知りうるようにするものでなければならない。

この「一人でも多く一円でも多く、想いとお金がめぐる世界をつくる」と言ったミッションを達成するためには、長期的には手数料を下げていく必要があります。クラウドファンディングの手数料はまだまだ高い(本日1月8日に17%から10%への引き下げを発表しました)。施策は大きく2つあります。一つはCAMPFIREの経済圏をより大きくし、スケールメリットを活かすこと。もう一つは、審査などの自動化できる作業は徹底的にシステム化すること。

ミッションの達成にはプロダクトの成長が不可欠であり、また、ミッションとプロダクトは表裏一体であると言ったことから、ミッション=プロダクト・ファーストと命名しました。プロダクトに関する思想は以下のnoteに詳しく書いています。

クラウドファンディング市場とともに急成長する当社にとって、経営の透明性・健全性、コンプライアンスの強化など、継続的な企業価値の向上を果たすことが経営上の重要課題であると認識し、コーポレートガバナンス強化のため、多数の社外取締役を招聘して新経営体制の発表も行いました。

ガバナンス経営を真剣に考えない者に企業リーダーたる資格など認められない。経営者は、自ら率先して、自社のガバナンス体制を検討、改良に努めるべきである。
ガバナンスは法律論ではなく経営論、つまり戦略そのものであるという視点は、筆者も日々実感するところである。グッドガバナンスに唯一の正解は存在しないが、それぞれの企業が自社を取り巻く環境を理解し、最終的にあらゆるステークホルダーの期待に応え、「守り」と「攻め」を両立して価値創造を実現することができれば、それをグッドガバナンスと呼ぶことができるのではないだろうか。

個人的な趣味としては、いくつかのNPOへの寄付や、若手アーティストを中心として作品を60点ほど購入したりなど、これまで行ってきたスタートアップ投資以外の、社会への投資・還元の軸ができつつある気がします。アートやコレクションについては様々な書籍でまだまだ勉強中ですが、以下の本がとても面白かったです。「蒐集(コレクション)」の概念で経済の歴史を紐解く意欲作。

つまり、蒐集という行為は資本主義を超える広大な概念なのです。先ほど触れたジョン・エルスナーは、「社会秩序それ自体が本質的に蒐集的(コレクティブ)」と述べています。そして「帝国とは諸国、諸民族を集めた一コレクション」であり、「一国とは諸地方、諸部族のコレクションである」とも語っている。社会体制、国家体制それ自体が蒐集から成り立っているというわけです。エルスナーによれば、キリスト教は「人々の魂を蒐集するシステム」。その一方で、資本主義は「モノやお金を蒐集するシステム」です。

個人的な2021年のテーマはそうだなあ、「掴み取る」ですかね。弟の死、コロナ、様々な辛い出来事のあった昨年でしたが、抗えないほどの濁流の中で、もがき、手を伸ばして何かを掴み取ろうとするイメージが思い浮かびました。掴み取れるのかはわからないが、少なくとも、掴み取ろうとするその「意思」を大事にしたい。

コロナはまだまだ収束する気配は見えませんが、皆さんもお体にお気をつけて。2021年もどうぞよろしくお願いします。


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家入 一真
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