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個をエンパワーするプロダクトとその思想

この記事は2020年CAMPFIRE Advent Calendarの25日目の記事です。ラスト。

こんにちは。CAMPFIREで代表をしている家入(@hbkr)です。最近はめっきりプロダクトの話をしてなかったなと思い、こうしてアドベントカレンダーを書くことにしました。長らく文章を書くことをサボっていたために、構成も文章も荒いですが、読んでいただけましたら幸いです。

プロダクトで思想を伝える

今でこそすっかりコードを書かなくなってしまいましたが、僕は元々デザイナー上がりのエンジニアでした。約20年前にロリポップという個人向けレンタルサーバーを立ち上げた際は、サイトのデザインやコーディング、サーバーの管理までひとりでやっていました。まだフルスタックなんて言葉も無かったと記憶しています。

20年前はSNSやブログサービスも無く、有料のレンタルサーバーも法人向けしか無いような時代でしたが、「インターネットによって、個人や小さなチームが、自分のウェブサイトを持って自己表現をする時代が来るはずだ」とロリポップを立ち上げました。

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その後にムームードメインという個人向けのドメイン取得サービスや、「自己表現をするように、気軽に個人や小さなチームが作品やモノを売ることが出来る世界をつくりたい」とカラーミーショップを立ち上げたりしました。(この思想はBASEにも受け継がれていたりします)

会社を経営しながら、個人ワークでもよく趣味でいろんなサービスを作っていました。読書好きが高じてブクログというサービスを作ったり、ブログのサイドに貼ることができるブログパーツや、RSSリーダー、Wii対応のYoutubeビューアーを作ったりもしました。もうすぐサポートが終了してしまうFlashでも様々なゲームを作りました。小さなものまで含めると、これまで作ってきたプロダクトは100を超えるのでは無いかと思います。とにかくつくりまくってた。

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そんな訳で、20代の僕はどちらかというとプロダクトを自らつくり、そのプロダクトによって、思想や実現したい世界観を社内外に伝える、という経営手法をとっていたような気がします。当時はよく「会社にはミッションもビジョンもいらない、プロダクトで語るべき」なんて豪語していました。若かったですね。

身近な人に手紙を書くようにプロダクトをつくる

40年も生きるとそれなりに価値観も変化してきましたが、「身近な誰かの顔を思い浮かべ、手紙を書くようにプロダクトをつくる」これは、今も昔も変わらずに大事にしている哲学です。

親や兄弟、友人、パートナー、もしくは自分自身。具体的に顔が思い浮かぶ相手に対して、「こういうプロダクトを提供したらあの人は喜んでくれるかな?」「この機能を実装したらこの人の負担が減るだろうな」そうやって、「拝啓〇〇様…」なんて、手紙を書くようにプロダクトを作る。

「ネットショップを作ってみたい。だけど、どれも難しくてよく分からない。」BASE代表の鶴岡くんのお母さんの一言から、今では130万ショップを超える開設数を誇るプロダクトが生まれました。

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身近な1人のペインに、テクノロジーとプロダクトで徹底的に向き合うことで、自分たちがやるべき意義がそこに生まれる。その後ろにある市場を見つけることができる。そこにしか真実は無いと思っています。

存在しない市場を開拓するプロダクト

まだクラウドファンディングというジャンルが存在しなかった2011年、東日本大震災直後にCAMPFIREは「マイクロパトロンプラットフォーム」と銘打ってローンチしました。小さな(マイクロ)パトロンがたくさん集まって、同じく小さな火を灯す挑戦者を応援するといった意味です。

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クラウドファンディングという存在しない市場を開拓してきたこの9年は、試行錯誤の連続でした。そもそも知ってもらうためにはどうしたら良いのか。「お金を集める」ということをどう理解してもらったら良いのか。プロジェクトを増やすにはどうしたら良いのか。支援者数を増やすにはどうしたら良いのか。安心・安全に使ってもらうためにどうしたら良いのか。すべてが手探りで、正解のない中でも正解"らしきもの"を求めて紆余曲折してきた、というのが正直なところです。

試行錯誤をする中で、本質を見失いそうになることは僕自身多々あります。日々やらねばならない仕事の中で、足元ばかりを見て歩くと、いつの間にか見知らぬ道に迷い込んでしまっている。そんな時は、プロダクトを届けたい相手の顔がぼやけてしまっているのかもしれません。

ミッションに基づいたリニューアル

2016年、瀕死の状態だったCAMPFIREを大きくリニューアルしました。当時はプロジェクトのサクセス率を主要KPIにおいていた為、目標金額を達成出来なさそうなプロジェクトは掲載しない、手数料も高い、All or Nothingの仕組みしか存在しない。そういった中で、毎月の掲載されるプロジェクト数も、総流通額も、どんどん減る一方でした。

プロダクトのリニューアルに際して、改めて、クラウドファンディングの本質とは何か、僕たちが実現したい世界は何か、ということをメンバーと話し合いました。インターネットが浸透したからこそ出来るようになったこと。それは、どんな小さな声であろうと、自由に表現や発信ができること。そして、そんな小さな声を拾い上げることができるということではないか、と。

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振り返ると、僕自身、これまで立ち上げてきたサービスは全て、個人や小さなチームの力を、インターネットでエンパワーするものだった気がします。

お小遣いで使えるサーバー「ロリポップ」、無料で始めることができるネットショップ「BASE」、そしてクラウドファンディング「CAMPFIRE」。挑戦者の小さな火をインターネットの力でより大きくする。インターネットの力でお金集めを民主化する。それこそがクラウドファンディングであり、CAMPFIREなのだと。

大きな案件が話題になることも多いクラウドファンディングですが、僕たちはもっと小さな個人やチームの活動を支援したい、そして1円でも多く、1人でも多くの方々に渡したい。それこそが、インターネットによって実現した、新しい資金調達の手段であるクラウドファンディングがやるべきことでは無いか。

その本質に立ち戻れば、あとはやることは明確でした。1円でも多く、1人でも多くの方々に渡すためにはどうしたら良いか。プロジェクト掲載基準の見直し、手数料の減額、All-inの実装、etc。

このリニューアル以降、これまでかなりのハイペースで様々な施策や機能実装・改善をして来られたのは、このクラウドファンディングの本質と、CAMPFIREとして実現したい世界を見極めることが出来たということ、そして、プロダクトに関わるメンバー全員が常にそのことを意識してくれるようになったということだと思います。本当に感謝しかありません。

コロナ禍においてプラットフォームとしてどうあるべきか

2020年、新型コロナウイルスが全世界を襲いました。外出自粛や消費減退、サプライチェーンの寸断、インバウンド需要の消滅など、経済ダメージは甚大なものでした。

経営難にあえぐ飲食店や宿泊施設、クリエイターやアーティストなどの資金調達を支援するために用意した、手数料0%でクラウドファンディングを行える新型コロナウイルスサポートプログラムでは、プログラムを通じて資金調達を始めた事業者の数は4600件、支援者数は延べ85万人、集まった支援総額は100億円を超えました。

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常連に愛されている飲食店、お気に入りのアーティスト、定期的に通うライブハウス・クラブ、老舗の旅館・ホテル…など、多岐に渡る方々がクラウドファンディングに挑戦されています。

コロナ禍で僕たちが大きく伸びた要因はこの9年、個人を中心とした小さなプロジェクトをたくさん扱ってきたからだと思っています。クラウドファンディングの本質的な価値に向き合ってきた。その結果、こういった未曾有の緊急事態において、たくさんの方に使っていただけたのだと思います。

私たちCAMPFIREは、今回のコロナに限らずこういった事態に何も出来ずに何がプラットフォームだ、という意識が強くあります。CAMPFIREは東日本大震災の年である2011年に立ち上がり、以降災害などの有事が起きた際には、困難な状況にある方々をクラウドファンディングを通じてサポートしてまいりました。

これからのCAMPFIRE

少子高齢化、広がる格差、多様化する価値観、震災、そして今回のコロナ…。課題先進国とも呼ばれるこの日本で、経済成長を前提としたモデルから変革できないまま、あらゆる業界やセクターにおいて、その経済圏からこぼれ落ちる方々がたくさん出てきています。

そんな変化の中でも、Youtube、Instagram、TikTok、note、BASEなど、様々なSNSやプラットフォームの登場で、個人や小さなチームでも活躍できる時代になりましたが、最初の1歩を踏み出す際の資金集めや仲間集めは解決されていません。実績も信用もまだ無い状態では、小さな個人やチームは銀行から融資を得る、投資家から投資をしてもらうといったことはまだまだ難しいのが現状です。

1人でも多くの方に1円でも多く、想いとお金がめぐる世界をつくる。これが僕たちのミッションであり、そのミッションに基づいて、たくさんの優秀なメンバーがプロダクトに関わってくれています。

コロナ禍において急激に認知及び需要が高まったクラウドファンディングですが、金融包摂の実現にはまだまだ桁がいくつも足りません。手数料もまだまだ高い。CAMPFIRE経済圏を拡大させる一方、CSチームが担うサポートや審査といった業務をテクノロジーで解決することで、手数料をゼロに近づけていくことが私たちの目標です。

そのため、来期からはプロダクトファーストを実現するための組織体制へとさらに移行していきます。経営メンバーとプロダクトチームが一枚岩となって、ミッションをベースとしたより早い意思決定の実現と、全てのメンバーがプロダクトにオーナーシップを持って関わるチームにしていきたいと思っています。

ミッションステートメントとして決意を文章化してみました。

私たちは、インターネットの可能性を信じ、誰もが声をあげられるプロダクトを創り続けます。

どんな小さな声であろうと、自由に表現や発信ができるように。
どんな立場の人であろうと、等しく金融にアクセスできるように。

テクノロジーを駆使して、共感や仲間、お金集めを支える新たなインフラになっていく。

そこから生まれる多様な経済圏を、毛細血管のように社会にめぐらすことで、すべての人が自己表現するように生きられる経済を実装します。

最後に

そんなCAMPFIREではプロダクトに関わるメンバーをオールジャンルで募集しています!ともに、金融包摂を実現するプロダクトを作りましょう!





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家入 一真
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